07-星空
そうしているうちにビルの前に着いた。
「ここだね」
「ここだよ」
僕達に悲愴【ひそう】感もなかった。エレベータに乗り、最上階に降りて屋上の出口へと向かった。外へ出ると、空は満面【まんめん】の星に覆われていた。僕達は暫くの間腰を降ろして星を見詰めていた。
「綺麗だね」
「本当だ」
自然と涙が頬を伝わった。彼も泣いていた。
「悲しかったからじゃない。最後にこんなに美しい星空を見ることができた事に感動していたから。」
うっと風が吹き。
彼の前髪を押し上げた。彼は慌てて手で顔を覆ったが、僕は見てしまった。そして、見てしまった事を後悔した。
彼が苦しそうに呟いた。
気味悪いだろう?」
彼の左目は義眼【ぎがん】だった。それを隠すために、前髪を伸ばしていたのだ。彼が言うには幼いごろに両親の不注意で左目を潰し以来義眼なるだと言う。僕の目から、自然と涙が零れた。身体的に普通と違うと言うことが彼のこれまでの苦難と苦痛をもの当たっていた。それがどれほど苛めの対象となったことか、どれほど辛く悲しめに遭ってきことか。言わずとも十分伝わってくる。
「どうしたの?なぜ泣くの?同情してるわけ?」
「ごめん、そういうわけじゃないだ」
本当は彼に同情している自分を隠したくて僕は無理に照れ笑いをかべた。
「死ぬなえに、少しとも君の事を分かって嬉しかったんだ。」
「嘘だった」
「でも罪な嘘じゃない。神様も許してくれるだろう。君の両親も苦労されたんだよね」
「そんな事ないよ!」
話が両親にお呼ぶと、彼が俄然【がぜん】表情を変えた。
「あいつらのせいで、僕はそんな姿になったんだ。だから苦労したとしても当然の報い【むくい】だ。僕が死にたいと思ったきっかけを作ったのはあいつなんだから」
彼は怒りにうち狂えている様子だった。僕は「しまった」と思ったが、又口を滑らせた。
「でも、きみが死ぬと、両親はきっと悲しむよね」
「悲しめばいいんだ!当然の報いだよ!」
それきり、僕達は黙った。
暫くして、彼がぽつりと言った。
「君の両親は?」
「うん、健在だよ」
「そう。。どして死ぬと思ったの?」
「もう、疲れちゃったから」
彼は一呼吸をおくと立ち上がった。
「行こうか?」
僕も導かれるように立ち上がる。
「もう、思い残すことはないよね」
彼の言葉に僕もゆっくりと頷き笑顔作ってみせた。
08-決行
僕達は手を取り合い、幸せの先ず未知の世界へと足を進めた。それに伴い視界がじょうじょうに開けてくる。ついには淵【ふち】に辿り着き、その視界は180度に広がった。目線を下に落とすと、下界【げかい】はまると奈落【ならく】の底のようで、大きな口をぱっくりと開けているかのように見えた。
不意に両親の顔がお感だ。すると、突然足が震えだした。がくがくとして震えが止まらない。両親の僕を心配する顔が涙に濡れている。僕はそれを打ち消すよに顔を左右に振った。
可笑しい。なぜ僕が震えている?なんとかここに来てリハーサルをした。その時には下を覗いても震えたりはしなかった。それでも、一人で死ぬには勇気がいると、仲間をつもり、今は彼が傍にいる。死ぬことなんでもう怖くはないはずだ。そりとも、本当の僕は死ぬことを望んでいない?
いや、そんなはずはない!
でも、どうしても震えが止まらない。もう一歩だりとも前に進めない。
彼は僕の異変に気付いて、怪訝【けげん】そうな顔をした。
「どうしたの?早く行こうよ!」
「ま、待って!」
彼が僕の手を引いた瞬間、思わずその手を振り払った。と同時に、彼の体がふわっと宙【ちゅう】に浮かんで見えた。
「あ~」
そう声を上げた僕を彼が悲しそうな目で見詰めていた。口元が微か【かすか】に動いて、
「なぜ?」
と言っていた。
そして、彼の姿が視界から消えた。
暫くして「クシャ」というと窓が潰れるような音が聞こえた。
「あ~あ~あ~~!」
恐々としたお覗く。下界の底に不自然に体を曲げた彼の姿を見える。その体の下から赤い液体が染【し】みだし、上々に広がってわっとなって行く。
「あ~あ~あ~~!」
下界が俄か【にわか】に騒声【そうせい】となる。
人が飛び出してきて、大声で何かを叫んでいる。特にサイレンの音が聞こえる。
「あ~~~~~」


